Helicobactor Pylori(HP)の中で、HP自身のmRNAの増幅を確実に行うため、全ゲノムが解読済みの菌株で、胃癌発症リスクの高いCagA陽性、VacA陽性の菌株としてJ99を選定、ATCCより入手した。ヒト細胞のモデル細胞株として、正常成人皮膚線維芽細胞株(NHDF)を2回にわたってクラボウから入手した。 NHDFを2代まで継代培養し、そこへ別に培養したHP・J99を混合培養した。菌数の比率はHP対NHDFで約10対1、培地比は逆に約1対100とし、CO2濃度も5%とNHDFの培養環境を重視した。 混合培養開始後、5時間、24時間、48時間の培養フラスコからDNAを抽出し、メチル化感受性制限酵素NotIと非感受性制限酵素MseIで消化、各制限酵素特有の消化末端にアダプターを結合後、アダプター配列特有プライマーでPCR増幅を行い、メチル化されたNotIサイトの量に応じた特定のPCRバンドの濃さを検出した(MS-AFLP)。その結果、NHDFにHP・J99が感染すると、メチル化(25バンド)だけでなく、脱メチル化(19バンド)も起きている可能性が示された。 また並行して、抽出したDNAを重亜硫酸処理し、E-カドヘリン遺伝子(CDH1)のメチル化、非メチル化アレル増幅用プライマーを用いメチル化特異的PCR(MSP)を行いつつある。 またヒト胃腺癌細胞株(AGS)を入手し、上と同様な実験・解析を行う準備を進めている。 さらにHP・J99株の発現するヒトDNMT1類似酵素候補としての発現タンパク質を選定、コントロールとしてのCagAと共に、HP由来のmRNA抽出後のcDNAをPCR増幅できるプライマーを設計・外注作成しmRNA発現変化を追跡する準備を進めている。
|