研究概要 |
POMGnT1の変異マウスの解析により以下の研究成果が得られた。 1)POMGnT1変異マウスの中枢神経系の解析 POMGnT1変異マウスの大脳皮質では著明な神経細胞の層構造の異常が認められた。BrdU法で、E12-15の神経細胞をラベルし、その移動を調べた結果、層構造の異常はリーラーマウスと類似した分子機序で起きていることが示唆された(論文準備中)。現在その分子機序を、リーリン分子との相互作用を中心に解析中である。 2)POMGnT1変異マウスの骨格筋の解析 POMGnT1が欠損したマウス骨格筋では、alpha-dystroglycan(α-DG)の糖鎖修飾に異常が認められ、ラミニン結合能が低下していた。しかし筋形質膜にはジストロフィン及びその結合タンパク質の発現が野生型マウスと同様に認められた。電顕では筋線維周囲に正常な基底膜の形成が認められた。HE染色ではほとんど筋変性壊死の所見はなかったが、血清CK値はわずかながら上昇していた。Evans Blueの筋線維への取り込みは軽度に認められたが,mdxで見られるEB陽性線維のクラスター像はみとめられず、POMGnT1が欠損したことによる筋膜の不安定化は軽度であると思われた。 3)POMGnT1変異マウスの筋衛星細胞の増殖能と分化能の解析 POMGnT1及び野生型マウスから筋衛星細胞をFACSで調整し、その増殖能をin vitroで解析した。ラミニンを主成分とするマトリゲルをコートした培養皿上で、野生型筋衛星細胞は良好な増殖能を示したが,変異マウスでは増殖能が低下していた。分化誘導した後の多核の筋管の形成能には差異は見いだされなかった。ラミニンとα-DGの結合が筋衛星細胞の増殖に重要であることが示唆された。
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