1.大脳辺縁系選択的にユビキチン化封入体形成を伴う加齢性神経変性を来すモデルマウスSAMP10を用いて、このマウスに出現する封入体形成の病的意義について検討した。SAMP10およびコントロール系のSAMR1マウスの胎仔大脳皮質より神経細胞を単離・培養し、10日目にプロテアソーム阻害剤MG115を培地中に加えた。MG115負荷により濃度および時間依存的に神経細胞死が見られたが、その程度はSAMP10とSAMR1の間で差は見られなかった。3μMのMG115を24時間負荷した際のユビキチン化封入体形成率は、SAMP10由来の細胞の方が有意に高かった。ユビキチンとMAP2による二重免疫染色標本を用いた形態計測で、封入体を有する神経細胞では細胞体から50μm以上伸びる樹状突起の数が封入体のない細胞と比べて有意に減少していた。この傾向はSAMP10、SAMR1いずれの細胞でも同様であった。以上から、SAMP10由来の初代培養神経細胞はプロテアソーム活性阻害によりユビキチン化封入体を形成しやすく、形成された封入体は樹状突起網の維持に対して傷害性に働くことがわかった。 2.SAMP10をモデルに用い、脳組織の傷害刺激に対する脆弱性と損傷に対するグリア応答について、SAMR1と比較検討を開始した。3ヵ月齢マウスの腹腔にカイニン酸(KA)を投与、3日後に脳切片を作製してニッスル染色を施した。SAMP10、SAMR1の対照群には生理食塩水を投与した。海馬損傷のGradeを3(アンモン角全域で神経細胞死)、2(アンモン角の一部で神経細胞死)、1(神経細胞死は無くグリア応答のみ)、0(生食群)と分類した。その結果、10匹のKA投与R1は全てがGrade1であったが、7匹のKA投与P10はGrade3、2、1がそれぞれ1、5、1匹と分布した。現在、グリアの応答について、形態学的解析を進めている。
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