研究課題
我々は、以前の研究課題にて、SAMP10マウスとSAMR1マウスとを交配してF_2マウスを作製し、16ヵ月齢における脳萎縮度を量的形質として、マイクロサテライトマーカーを用いた連鎖解析を行った。その結果、D15Mit43とD15Mit193の間にLikelihood ratio statisticが12.1の値をもつ有意の量的形質遺伝子座位(QTL)を検出した。そこで、本研究課題では、そのQTL領域に含まれる遺伝子のうち、Nell2,Senp1,Asb8,Pfkm,Zfp641こついて、ダイレクシーケンスを行い、SAMP10に特徴的な遺伝子変異が存在するか否かを検討した。その結果、これらの遺伝子のexon領域には有意の変異を見出すことは出来なかった。次に、このQTLを含む小領域のみがSAMP10由来で、他はSAMR1の遺伝子背景を有するコンジェニック系統の作製に取り組んだ。本研究課題の3年間を費やして、現在は10世代の戻し交配までを終えており、間もなくコンジェニック系統を完成できるところまで進展した。今後さらに戻し交配を進め、コンジェニック系統を完成させた後には、大脳辺縁系選択的に出現するユビキチン化封入体を指標として、加齢に伴う神経変性がどのように修飾されるのかについて明らかにしてゆく予定である。その準備段階として、本年度はより迅速に組織標本を作製する工夫を行った。即ち、振動刃型薄切装置を用いて無包埋の固定組織片から30ミクロン厚の切片を作製し、浮遊状態のまま抗ユビキチン抗体を用いて免疫染色を行って、切片を透徹・封入した。嗅内野に一定面積の計測視野を設け、径3ミクロンを超える大型封入体を有したニューロンを数えたところ、今回の方法で作製した標本上で計数した封入体含有ニューロンの率は、SAMP10マウスにおける加齢性神経変性の指標として有効であることが明らかとなった。
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