ニューロリギン4遺伝子の転写制御領域の解析を進めたところ、データベース上登録されている2つの異なる5味の非翻訳exonに加えさらに2つの5'末非翻訳exonが存在することが明らかとなった。これら4つの5'末非翻訳exonの中で最も5'側に位置するものがヒト胎児脳では優位に使用されていること、このexonに関してデータベース上見出される5'末より約200塩基上流に主な転写開始点があることが明らかとなった。ニューロリギン4を発現している細胞株を検討したところ、ある種の神経芽細胞腫と骨芽細胞腫に発現が認められ、この細胞株を用いてレポーターアッセイにより転写制御活性の検討を進めた。その結果、転写開始点上流300塩基の範囲に転写活性が認められ、この領域はニューロリギン4を発現しない、もしくは発現の微量な細胞株では転写活性をほとんど示さなかったことから、基本転写活性に加え、細胞特異性を規定するエレメントも含まれていると考えられた。この領域の転写因子結合配列候補に関して、さらに検討を進めている。 また、自閉症の発症にはエピジェネティックな遺伝子発現制御の関与が示唆されているため、本年度はニューロリギン4遺伝子のメチル化状況に関する解析を進めた。その結果、我々が見出した転写制御領域は上記ニューロリギン4を発現していない細胞株では強くメチル化されているのに対し、ニューロリギン4を発現する細胞株ではメチル化されていないことが明らかとなった。これをもとにヒト脳組織を材料に同様の検討を行ったところ、新生児脳組織ではメチル化を受けていない遺伝子クローンが見られたが、同個体からの肝組織では全ての遺伝子クローンがメチル化されていた。以上から生体内においてもニューロリギン4遺伝子はメチル化制御を受けていることが示唆された。
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