平成18年度にはT.cruz感染細胞におけるc-FLIPの発現上昇機構としてその分解系について解析を行った。c-FLIPはshortlivedタンパク質として知られており、ユビキチン-プロテアソーム系で分解されることが報告されている。感染および非感染HT1080細胞からライセートを調製し、抗c-FLIPおよび抗ユビキチン抗体により免疫沈降を行った。SDS電気泳動後、抗ユビキチン抗体あるいは抗c-FLIP抗体でウェスタンブロットを行い、ユビキチン化されたc-FLIPが検出されるかどうか調べた。その結果、感染細胞内のc-FLIPはユビキチン化されたバンドとして検出され、さらに分子量が大きいサイズに複数のバンドが見られていることからポリユビキチン化されていることが示された。しかし、免疫沈降されない上清の画分にも薄いバンドが見られた。次に、感染、非感染細胞におけるプロテアソーム活性について検討した。蛍光標識された合成基質を用い、活性を測定したところ、感染細胞の方が活性が高いという結果が得られた。そこで、Lineweaver-Burkプロットを行い、Km値ならびにVmax値を算出した。非感染細胞のKm値は56μM、Vmax値は0.22RFU min-1 μg-1であったのに対し、感染細胞ではKm値は50μM、Vmax値は1.67RFU min-1 μg-1であった。すなわち両者でKm値はほぼ同程度であり、基質に対する親和性は同様であると観察された。また、Vmax値が感染細胞で高いことが示された。この理由の1つとしては、感染細胞内の原虫もプロテアソームを持っていることがわかっており、おそらく原虫のプロテアソーム活性も同時に測定されたためと考えられた。以上より、感染細胞でもc-FLIPのユビキチン化は起こり、プロテアソーム活性は非感染細胞よりもむしろ高く、おそらく正常に働いていることが示唆された。
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