沖縄諸島海域に生息し、激しい刺傷被害を引き起こすことが知られているイソギンチャク類ウンバチイソギンチャク2種及びハナブサイソギンチャクについて、健康被害の実態についての疫学調査を行うとともに、タンパク質毒を分離・精製して、化学的性状を解明し、単離された毒素群の作用機序を探り、刺傷被害時における効果的な治療法開発の基礎となる知見を蓄積することを目的として研究を行った。疫学調査では、これまでの県の報告をまとめ、平成10年度から平成17年度の8年間に海洋危険生物による被害件数は2500件近くにのぼり、ハブクラゲによるものは半数近くを占めるが、イソギンチャク類による被害は43件(1.8%)と少なかった。うち12件の被害のあったウンバチによる事例は各地でみられ、その多くが軽・中等症であったが、中には腎不全を起こすような重症例も認められた。ハナブサによるものはそれ程多くはなく、受傷しても軽症ですむ例がほとんどであった。生息域に蘭しては、ウンバチは近年殆んど姿を見かけることが少なくなったが、最近になって慶良間諸島、奄美大島海域で生息が確認され、再び分布が広がる気配がある。また、ハナブサに関しては、本島各地の浅海の砂地に生息が認められた。次にタンパク質毒については、ハナブサの頂球にある刺胞から粗毒を抽出し、その活性を調べたところ、ウンバチのような溶血活性は認められなかった。以前の報告で、ウンバチイソギンチャク類の毒は溶血活性を持ち、その溶血毒は主に分子量が20KDaの塩基性タンパクであることが明らかにされたが、今回それ以外に、ウンバチにおいて、新規と思われる4種類のタンパク毒が見出された。その中の120kDaのタンパクは強い致死性を示し、また50kDaのものは溶血活性を示した。現在さらに毒成分の活性機能と分子特性を解析中である。
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