研究概要 |
平成17年度の研究計画に従って,ウェルシュ菌の病原性発現へのヒト体内などの常在菌による影響を調べるため,大腸菌,黄色ブドウ球菌などの培養上清をウェルシュ菌菌体に加えて,RNAを抽出し,マイクロアレイを用いて遺伝子発現の変化を検討した。その結果,このような条件では良質なRNAを調製することが困難である事が判明し,現在RNA抽出の条件を再検討中である。しかしながら予備的な実験から,多数の遺伝子が異種の菌の培養上清により発現誘導される事が確認され,これからの実験に期待が持てると思われた。一方,ウェルシュ菌培養液にヒト血清を加えると,病原因子であるシアリダーゼを含む多数の遺伝子の発現が変化することがマイクロアレイ解析により明らかになり,この血清中の誘導因子は分子量10万以上でタンパク性のものと推測された。さらに,すでに作製した28の二成分制御系遺伝子破壊株すべてに対して血清による刺激を行ったところ,4種の二成分制御系欠損株においてシアリダーゼ遺伝子発現の誘導が減弱していた。これらの株の詳細な解析により,二成分制御系TCS12とTCS16の双方が共同して血清中の誘導因子を感知することが明らかになった。現在この血清中因子の分離、精製を精力的に試みており,この血清因子が同定されれば,血清因子のアンタゴニストや二成分制御系に対する阻害剤などの開発を通じて,将来的な予防、治療の標的となることが期待される。
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