研究概要 |
ケモカインレセプターの発現様式は細胞の種類により異なり、未熟樹状細胞ではCCR1,2,3,5,6などが発現している。一部のケモカインレセプターは、リガンドが結合するとリガンドとともに細胞内に取り込まれることが報告されている。未熟樹状細胞上のケモカインレセプターを標的として、抗原取りこみ効率を上げることによりワクチン効果の増強をはかる、新たなワクチンを検討した。 CCR5のリガンドのひとつであるMIP-1α遺伝子の下流にリンカーをはさんでGFP遺伝子を連結した発現プラスミドを構築した。これを293細胞に導入することによりMIP-1α-GFP融合タンパクを調製し、樹状細胞株などに作用させた。共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した結果、細胞膜表面上のCCR5とMIP-1α-GFP融合タンパクの局在が一致した。さらに細胞内へ両者が取り込まれ、その局在が一致することが確認できた。 結核菌の主要分泌抗原であるMPT51遺伝子をMIP-1αの下流に連結した発現プラスミドを構築(pCI-MIP-1α-MPT51)し、DNAワクチンとした。遺伝子銃を用いてBALB/cマウスに1回2μg、隔週3回免疫した。最終免疫の3日後に脾臓細胞を調製し、テトラマー法によりMPT51特異的CD8^+T細胞を検出した。融合型(pCI-MIP-1α-MPT51)で免疫した場合、抗原単独発現プラスミド(pCI-MPT51)に比べ、抗原特異的CD8^+T細胞の数が増大した。その数は抗原単独発現プラスミドにMIP-1αを発現するプラスミド(pCI-MIP-1α)を加えて免疫した場合よりも高いものであった。また、抗原特異的IFN-γの産生も融合型が最も高いという予備的な結果も得ている。これらのことより、未熟樹状細胞に発現しているCCR5を介して抗原を取り込ませることで、効率良くT細胞を感作できることを示唆された。
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