研究概要 |
ケモカインレセプターの発現様式は細胞の種類により異なり、未成熟樹状細胞ではCCR1,2,3,5,6などが発現している。一部のケモカインレセプターはリガンドが結合すると、リガンドとともに細胞内に取り込まれることが報告されている。未成熟樹状細胞上のケモカインレセプターを標的として、抗原取りこみ効率を上げることによりワクチン効果の増強をはかる、新たなワクチンを検討した。 CCR5のリガンドのひとつであるMIP-1αのC末にGFPを連結させたタンパク(MIP-1α-GFP)を調製し、骨髄由来樹状細胞に作用させた。共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した結果、MIP-1α-GFPが樹状細胞内に効率よく取り込まれ、CCR5との局在が一致することが確認できた。マクロファージ細胞株に比べ、骨髄由来樹状細胞の方が効率よく融合型タンパクを撮りこむことが示唆された。 結核菌の主要分泌抗原であるMPT51遺伝子をMIP-1αの下流に連結した発現プラスミド(pCI-MIP-1α-MPT51)をDNAワクチンとして、その効果を検討した。遺伝子銃を用いてBALB/cまたはC57BL/6マウスに1回2μg、隔週3回免疫した。テトラマー法にる解析により、融合型(pCI-MIP-1α-MPT51)で免疫した場合、抗原単独発現プラスミド(pCI-MPT51)に比べ、抗原特異的CD8^+T細胞数が増加することがBALB/cマウスにおいて認められた。また、同マウスにおいて、抗原特異的IFN-γの産生も融合型が最も高く、抗原単独発現プラスミドにMIP-1αを発現するプラスミド(pCI-MIP-1α)を加えて免疫した場合よりも高いものであった。一方、C57'BL/6に免疫した場合も、CD4^+T細胞によるIFN-γ産生能も融合型DNAワクチンが最も高かった。これらのことより、未成熟樹状細胞に発現しているCCR5を介して抗原を取り込ませることで、効率良くT細胞を感作できることが示唆された。
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