レジオネラによる肺炎は汚染された温泉などを原因とするアウトブレイクで社会問題となっている新興感染症である。レジオネラはDot/Icm IV型分泌系を使って機能性タンパク質(エフェクター)を宿主真核細胞質へ輸送することにより、宿主細胞内での増殖を可能としている。DotAはこの分泌系の一員としてエフェクター輸送に必須なタンパク質である。DotAは複数の膜貫通ドメインをもち、細菌中では細菌内膜に局在している。我々はDotAの大部分がDot/Icm分泌系によって培養上清中に分泌されていることを明らかにしていた。本研究ではDotAの分泌機構およびエフェクター輸送に関わる機能を解明することを目標に、DotAタンパク質の機能を明らかにするためにフォワード・ジェネティックスの手法を用いてアプローチすると同時に、DotA分泌に特異的に必要なDot/Icm分泌系の探索を行った。DotA分泌あるいはアメーバー中での増殖能を欠損するDotA点変異を分離するため、ハイスループットスクリーニング系を構築し、結果として57の変異株、22の独立な点変異を分離した。得られた全ての変異タンパク質発現株において、DotA分泌の欠損とアメーバー中での増殖阻害が相関しており、このことはDotAの分泌がその機能に必須であることを強く示唆する。DotA分泌を欠損する点変異の分布は予想外に多岐にわたっており、DotA分泌には複数の因子がかかわるマルチステッププロセスであることが示唆される。一方で、DotA分泌に特異的に必要なDot/Icm分泌系は得られなかったが、中核構造体の構成タンパク質と考えられていたDotFが、DotA分泌およびエフェクター輸送に必須でないことが明らかになった。
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