研究概要 |
腸管感染菌である毒素原性大腸菌およびアエロモナス(Aeromonas)の下痢毒素、アエロモナスの溶血毒素、プロテアーゼの成熟化過程の解明を試みた。 毒素原性大腸菌は二種類の耐熱性エンテロトキシン、ST-1とST-2、を菌体外に放出し、患者に下痢を発症せしめる。これまでの研究で両STともに内膜の通過にはSecシステムを利用しペリプラスムに達すること,続く外膜の通過にはTolCを利用する事を明らかにしてきた。今年度はこのペリプラスムに達したSTをTolCがいかに認識するかを研究した。方法としてはビブリオ科のTolCとのキメラTolCを作製し,そのキメラTolCの機能を測定した。その結果TolCの198-214位が重要であることが判明した。 Aeromonas sobria, A. hydrophilaの下痢毒は溶血活性を有する毒素であり,これらの菌は溶血活性を示す。しかし下痢を発症するA. caviaeは溶血活性を示さない。腸管ループ活性でA. caviaeの下痢毒を検討した結果,この菌の溶血毒素はプロテアーゼで分解を受けやすい毒素であるが,腸管内では産生されて,下痢を発症している事がわかった。 アエロモナスのセリンプロテアーゼの精製品からカルボキシ末端の82アミノ酸残基を欠損してもプロテアーゼ活性は十分に発揮された。しかしストップコドンの挿入でこの82残基を生合成しない変異DNAからは,活性のあるセリンプロテアーゼは生合成されないことを見出した。このセリンプロテアーゼの活性体構築にはセリンプロテアーゼ遺伝子の下流にコードされているシャペロン蛋白質であるORF2とセリンプロテアーゼとの相互作用が必要であるが,ランダムペプチドディスプレイライブラリーを用いての解析の結果、ORF2はASP前駆体のC末端から72〜80番目の領域と反応している可能性が示された。
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