研究概要 |
クロストリジウム属細菌が産生するコラゲナーゼは、不溶性コラーゲンをよく水解する。これらの酵素のC末端領域にはコラーゲン結合ドメイン(CBD)が存在するが、これを生理活性物質と融合することにより薬物送達システム(DDS)に活用できることを以前示した。DDSに最適化した分子をデザインするために、CBDの構造活性相関の解析に着手した。ドメイン構造をX線結晶学的に決定したところ、βサンドイッチ構造をとっていた。またアラニン・スキャンを行って結合に重要な残基を決定したところ、サンドイッチの一方の側面に集中していた。これらの結果をもとに分子ドッキング計算により結合モデルを検討したところ、1)CBDのβストランドと直角にトロポコラーゲンが結合するモデル、2)1)と同様だがトロポコラーゲンが逆向きのモデル、3)トロポコラーゲンが斜めに結合するモデルが有力な候補となった。 今回はこれら3つの結合モデルのうち、いずれが正しいのかを明らかにする目的で、NMRによるPerturbation assayを行った。組換えCBDを産生する大腸菌を15Nアンモニウム,13Cグルコースを含む最小培地で培養し安定同位体で標識されたCBDを精製した。次に、この標品を用いてHSQC解析を行い、各シグナルの帰属を完全に決定した。さらにCBDに結合することが判明しているコラーゲン様ペプチド(Pro-Hyp-Gly)10の存在下で同様の解析を行い、シグナルのシフトまたは消失が起こる残基を特定した。この結果を結晶構造上にプロットしたところ、トロポコラーゲンが斜めに結合するモデル3が否定された。現在、さらに詳細な解析を行って、モデル1または2のいずれが真の結合様式に近いかを検討している。
|