ビブリコレラの産生するコレラ毒素はヒトに下痢を引き起こす毒素であることがよく知られており、さまざまな研究がなされている。コレラ毒素はA-Bのサブユニットからなり、BサブユニットはGM1と結合すること、AサブユニットはGs蛋白質をADPリボシル化することにより、アデニル酸シクラーゼの活性化が起こり、細胞内cAMP濃度が上昇し、下痢が引き起こされる。一方で、コレラ毒素は免疫賦活活性(粘膜アジュバンド活性)があることも知られている。この免疫賦活活性は、酵素活性を持たないコレラ毒素Bサブユニットでも示す。このコレラ毒素のBサブユニットはガングリオシドの1つであるGM1に結合することが常識になっているが、しかしながら、このような活性発現をガングリオシドと結合することのみで説明するのは難しい。 そこで、本研究の目的は、コレラ毒素Bサブユニットのみで示す生物活性を理解・解明することを考え、コレラ毒素Bサブユニットと結合する蛋白質を精製・同定することを目的とした。AZ-521細胞において、コレラ毒素Bサブユニットと結合する蛋白質として免疫沈降法により約30kDa蛋白質(p30)が共沈するのが認められ、この検体を多量に集めSDS-PAGE電気泳動をおこなった結果、CBB染色でp30蛋白質バンドが認められた。そこで、そのゲルからp30を切り出し、トリプシンを用いたin gel digestionにより酵素消化をし、質量分析器によるペプチドマッピングをおこない、データーベースでいかなる蛋白質であるのか解析した結果、プロヒビチンであることが推定された。推定された結果の確認のために、市販の抗プロヒビチン抗体を用いたウエスタンブロッティングを行った結果、p30はプロヒビチンであることが確認された。
|