ビブリオコレラの産生するコレラ毒素はA-Bのサブユニットから成り、BサブユニットがGM1と結合し、AサブユニットはGs蛋白質をADPリボシル化することによるアデニル酸シクラーゼを活性化および細胞内cAMP濃度を上昇させ、下痢を引き起こすことが知られている。一方、コレラ毒素のBサブユニットは結合ドメインであり、アデニル酸シクラーゼを活性化できないが、興味深いことに、コレラ毒素Bサブユニットのみで粘膜アジュバンド活性を示すことやサイトカインの分泌に影響を与えることなどが報告されている。そこで、本研究は、コレラ毒素Bサブユニットのみで示す生物活性の詳細を明らかにすることを目的とした。 コレラ毒素Bサブユニットのみで、HeLa細胞を刺激してもIL-8のmRNAの発現誘導は認められなかったが、PMAにてHeLa細胞を刺激するとIL-8のmRNAの発現誘導が認められた。一方、あらかじめコレラ毒素BサブユニットにてHeLa細胞をインキュベートした後にPMAにて刺激すると、IL-8のmRNAの発現誘導が抑制された。このことは、コレラ毒素Bサブユニットのみで動物細胞に生物活性を引き起こせることを示しており、この生物活性におけるコレラ毒素Bサブユニットと結合する32kDa蛋白質(p32)の役割を追求した。
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