研究概要 |
系統分類学的な解析によりUSPとこれに続くORFUからなる尿路病原性大腸菌(UPEC)に特異な病原遺伝子群(PAI)を4つのsubtypeに分類できることが分かった。単純性尿路感染症(194膀胱炎症例、76腎孟腎炎症例、107前立腺炎症例)から分離した427株のUPECと健常者由来の大腸菌を系統分類学的に分類し、PAI型別、尿路病原因子及び血清型における相関を調べたところ、系統分類でB2に分類されusp遺伝子をもつ株は、膀胱炎、腎孟腎炎並びに前立腺炎患者由来株で等しくdominantであった。更に、各PAI型別は尿路病原性因子及び特定の血清型と高い相関が見られた。(Kanamaru S, Kurazono H.et al.,Int.J.Urol.13:754-760,2006)。 単純性急性尿路感染症(194膀胱炎症例、76腎孟腎炎症例、107前立腺炎症例)から分離されたUPECのバイオフィルム形成能をクリスタルバイオレット結合試験で検討した。前立腺炎由来株は腎孟腎炎並びに膀胱炎由来菌株に比較して、著しいバイオフィルム形成能を示した。同様に、前立腺炎由来株の多くが属する血清型04と022の菌株も、他の血清型の菌株に比較して、著しいバイオフィルム形成能を示した。この結果より、細菌性急性前立腺炎とバイオフィルム形成能には高い相関がある事が示唆された(Kanamaru S.,Kurazono H.et al.,Int.J.Antimicrob.Agent 28:Suppl 1:S21-S25、2006)。 単純性膀胱炎、複雑性膀胱炎、および無症候性細菌尿の患者から分離した大腸菌の遺伝学的並びに血清学的性状を比較検討した。全ての分離菌は病原グループB2に属していた。調査した18種類の病原因子のうち14種類は全ての症例で共通であったが、pap、iha、ompおよびPAI遺伝子は複雑性膀胱炎や無症候性細菌尿より単純性膀胱炎でより高い頻度で観察された(Takahashi A et al.,J.Clin.Microbbiol.44:4589-4592,2006)。
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