研究概要 |
1997年9月、福岡でおきた食中毒の原因菌として分離された黄色ブドウ球菌Fukuoka株は、既知のSEA〜Iを産生せず、プラスミッドpF5にコードされた新規のSEIJをSEIRを産生することが共同研究者の重茂ら(lnfect.Immun.71;6088,2003)により、報告されている。今年度の研究で、同じプラスミッドに、さらにSESおよびSETがコードされ、産生されていることを見出した。これらの新規腸管毒素は、ヒトのリンパ球を用いた研究でスーパー抗原活性を持つこと、カニクイザルを用いた研究で嘔吐活性を持つことを示した(Ono, et. al.)。 Streptococcus dysgalactiae-derived mitogen(SDM)を結晶化し、X線解析を行った。SDMは分子系統樹では他のスーパー抗原と異なる新規のスーパー抗原であるが、一部異なるもののスーパー抗原の特徴的な構造をしている。C末端に亜鉛を持ち、Zn-イオンによりMHCクラスIIβ鎖に結合することが変異毒素を用いた実験で明らかになった(Saarinen, et. al.)。 マウスモデルを用いて同一のスーパー抗原に応答するT細胞の中でもVβが異なるとその反応の強弱は異なる。この機序を明らかにする為、変異体スーパー抗原を作成してT細胞レセプター(TCR)と結合が予想されているどの部位がT細胞の反応を決めているかと検討し、ある特定の部位のアミノ酸を置き換えると応答性T細胞の反応が著しく変化することを見出した。反応の違いはスーパー抗原、TCRとMHCクラスII、3分子間の親和力で決まることを可溶性のTCRとMHCクラスII分子を調整して3分子間の親和力を測定した。現在、結果をまとめ、論文を準備中である。
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