コレラ毒素(CT)、毒素原性大腸菌の易熱性下痢毒素(LT)は粘膜アジュバント活性を持つ。我々は毒性が低く、水痘(VZV)ワクチンに強力な粘膜アジュバント活性を持つ変異LT (mLT)を報告した(Vaccine.19:2071と22:931.2001.J.Med.Virol69:451と70:329.2003.)。CTは他抗原の液性免疫を活性化するのに対し、mLTはVZVなどの細胞性免疫(CMI)を活性化する。さらに、細胞性免疫が感染防御に重要とれている結核菌感染においても、本毒素は死菌BCGに対してCMIを活性化し、経鼻サブユニットワクチンの現実化に大いに寄与する可能性がある(Vaccine.24:3591、2006)。また機能解析では、mLTがマクロファージ(Mφ)に直接作用して、IL-12産生を促進し、αβT細胞のTh1/Th2バランスをTh1型に傾斜させること、IL-12のTh1傾斜に補助的な役割をするMφからのTNFα産生促進すること、T細胞のIL-12Rβを発現促進することを明らかにした(Vaccine.24:2815、2006)。一方、毒素によるTh1/Th2バランスの変化にγδT細胞も関与することを明らかにしている(Clin.Diag.Lab.Immunol.12.157.2005.)。そこでこれらの実験結果を基に、本申請ではmLTのMφへのIL-12およびTNFα産生促進作用がどのような細胞内情報伝達機構で行なわれ、αβおよびγδT細胞のTh1傾斜が起こるかを解明することを目的に企画し、(a) mLTによるIL-12およびTNFα産生増加とNF-x経路の関連の解析、(b) mLTによるIL-12およびTNFα産生増加とJNK経路の関連の解析を行う。
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