研究概要 |
セレクス菌由来スフィンゴミエリナーゼ(SMase)は、スフィンゴミエリン(SM)をホスホリルコリンとセラミドに加水分解するCO^<2+>,Mg^<2+>などの2価の金属イオンを要求する酵素で、溶血活性を示す。まず、Co^<2+>、Mg^<2+>、そして、Ca^<2+>存在における酵素活性を比較すると、酵素活性は、Mg^<2+>>Co^<2+>>Ca^<2+>の順であった。カイネティク分析によると、二価金属イオンによる活性の相違は、基質との親和性によるのでなく反応速度に依存する事が判明した。次に、SMaseを大量精製後、酵素とCo^<2+>、Mg^<2+>、そして、Ca^<2+>とを共結晶化し、その三次元構造を約1.9オングストローム分解能で解析した。その結果、唯一のクレフトの中心部、活性中心と推察される領域は、同じファミリーに属するデオキシリボヌクレアーゼI(DNaseI)触媒領域と類似しているが、SMaseにはDNaseIと異なり、アーム状に飛び出した領域が存在した。活性部位と推察されるクレフトの中心部には、Co^<2+>の場合、2個の金屑イオンが保持されたが、Mg^<2+>とCa^<2+>場合のみが1個保持されていた。一方、1個のCo^<2+>及びMg^<2+>は、水分子とアミノ酸残基との結合様式は、全く同じで、金属イオンが占める空間も同じあるが、Ca^<2+>は、大きく異なっていた。これらの金属イオンに結合していると推察さるGlu-53及びAsp-295を置換すると、金属イオンも、酵素活性も消失した。クレフトの端に、いずれの金属イオンの場合も、1個同じ位置に、同じように結合していた。その役割は,不明である。アーム状に飛び出した領域のアミノ酸残基を置換すると、基質、さらに、膜に結合能を失うことが判明した。以上から、酵素の触媒部位と結合部位が明らかとなった。
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