研究概要 |
総計501株の大腸菌を収集し、分子検討解析を行った。その結果,腸管外病原性大腸菌の85.9%が系統B2大腸菌に属することが示された。健常者便由来大腸菌では半数以上が系統A/B1に属し、系統B2は40.3%であることが示された。また、系統B2大腸菌は8つのサブグループに分類できることを示した。 これらのサブグループから代表菌株を選定し、尿中増殖能、IL6誘導能、各種培養細胞への付着能を検討した結果、系統による明らかな相違は認められなかった。 既知競争排除遺伝子の分布の検討 既知の競争排除に関わると考えられる遺伝子 cdiAのExPEC菌株での分布を検討した。多様な菌株でcdiA遺伝子の存在が確認された。cdiA遺伝子をコードしているpathogenicity island(PAI)の存在を検討したところ、papGIII, hylAとともにcdiAをコードするPAIが系統を超えて分布していることが示された。 健常者ボランティア分便中の大腸菌の検討。 健常人ボランティアの分便中の大腸菌を定期的な検便を通して分離して、pulsed-field gel electrophoresis, PFGE解析および系統解析を行った。総計72回の検便をおこない、MaConkey培地を用いてそれぞれ12菌株を単離した。その中で、計586株の大腸菌が分離された。PFGEおよび系統解析の結果、PFGEパターンがB2-8菌株が数ヶ月間持続して分離されることが示された。しかしながら、cdiA遺伝子を所有しない菌株であっても数ヶ月間同一の個体から分離されることが示された。系統B2菌株以外でも腸管内で持続して存在することも認められたことから、腸管内での競争阻害に関しては、さらに詳細な解析が必要であることが示唆された。
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