EBウイルスはヒトBリンパ球を不死化して無制限に増殖可能なLCLに変換する活性をもつ。EBNA3Cは不死化に必須のウイルス蛋白質である。 EBNA3Cの作用メカニズムを明らかにするために、EBNA3Cの機能をコンディショナルに制御できるLCLを樹立した。EBNA3Cの機能をオフにするとLCLは増殖を停止したことから、EBNA3CがLCLの増殖維持に必須であることが明らかになった。EBNA3Cをオフにすると、Cdkインヒビターpl6(INK4A)の増加、Rb蛋白質のリン酸化の減少、および細胞周期の停止が認められたことから、EBNA3Cはp16(INK4A)の発現を抑制することによりLCLの細胞周期進行に寄与していると考えられた。 EBNA3Cは宿主のDNA結合蛋白質RBP-Jkappaと結合し、RBP-Jkappa依存的な転写制御能をもつことが報告されている。RBP-Jkappaとの結合領域を欠失したEBNA3C変異体、RBP-Jkappa依存的な転写制御能を欠くEBNA3C変異体は、いずれもLCLを増殖させることができなかった。したがって、EBNA3CはRBP-Jkappa依存的に転写因子として機能していることが示唆された。 さらに、様々なアミノ酸領域を欠失したEBNA3C変異体を作製して、EBNA3Cの機能に重要な領域を決定した。その結果、アミノ酸領域1-506、および、アミノ酸領域733-909はEBNA3Cの機能に必須であることが明らかになった。これらの領域はヒトのEBウイルスとサル(Rhesus、Baboon)の類縁ウイルスの間でよく保存されている領域である。したがって、EBNA3Cの不死化に必須の領域は進化上保存されているものと考えられた。
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