研究概要 |
1.SV5(Tl株)の細胞融合抑制機能の解析 T7-RNAポリメラーゼを構成的に発現するBSRT/7細胞に,T7プロモーターで駆動するWR株のゲノムcDNAとNP,PおよびL蛋白の各遺伝子のcDNAをトランスフェクトして,WR株の感染性ウイルスを回収する系を完成させた。WR株のHN遺伝子とF遺伝子をそれぞれ,あるいは双方ともTI株の対応する遺伝子に置換したキメラウイルスを回収して解析したところ,予想に反していずれも細胞融合誘導能を有していることが判明した。従って,T1株の細胞融合抑制機能はHN蛋白やF蛋白以外のウイルス蛋白の影響も受けていることが示唆された。平成18年度の結果から,T1のHN蛋白が細胞融合抑制機能を有していることが分かっているので,M蛋白やSH蛋白などの他の膜蛋白とHN蛋白との相互作用により,細胞融合が制御されているものと考えられる。 2.SV5のHN-F相互作用に関わる領域の同定 SV5のF蛋白の3D立体構造に基づいて,F蛋白のF1中央部領域(aa203-423)のうち分子表面に露出している小領域を4箇所選定した。この小領域を単独にあるいは組み合わせてSV41のF蛋白の対応領域に置換したキメラF蛋白を作製し,SV41のHN蛋白と共発現させて細胞融合が誘導されるか否かを調べた結果,4つのうち2箇所(234-252と278-285)の領域がSV41のHN蛋白との相互作用に関わっていることが明らかになった。しかし4箇所の小領域すべてをSV41のF蛋白の対応領域に置換してもSV5のHN蛋白との相互作用が残存した。そこで,上記の2箇所の領域にヘプタッドリピート領域2箇所(132-165と455-478)を組合せて置換したところ,SV5のHN蛋白との相互作用は減弱した。従ってこれら4つの小領域がHN蛋白のストーク領域との直接的結合に関与するものと考えられる。
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