インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のC末端側サブユニット(HA_2)に存在するαヘリックス領域のアミノ酸配列がH1〜H15亜型ウイルス間でよく保存されていることを見出した。HAの三次元構造から、この領域はHA三量体の形成に関与することが推察された。そこで、ヒト由来H3ウイルスの本領域に含まれる10残基長のアミノ酸を合成し、ホモのウイルス株に対する抗ウイルス作用を調べた。その結果、400μg/mlの培地添加で感染24時間後のウイルス産生量が約1/10に減少した。感染細胞内で新たに合成されたHAの三量体形成を阻害することによって、HAの輸送あるいは機能的発現が抑制されたものと考えられる。現在、鳥由来H3ウイルスへの作用を確認中である。 代表研究者は、ウシヘルペスウイルス1(BHV1)糖蛋白gBのヘプタドリピート領域に相当するペプチドがBHV1のみならず他のヘルペスウイルスおよびパラミクソウイルス科に属するニューキャッスル病ウイルスの増殖を阻害することを報告している。今回はヒトの単純ヘルペスウイルス(HSV)の相同ペプチドを合成して様々なウイルスに対する作用の確認を試みたが、本ペプチドは水溶性が低く十分な抗ウイルス作用は認められなかった。 HSVgDはヒトネクチンと結合後、構造変化を起こしてgBによる膜融合を誘導することが示唆されている。HSVおよび仮性狂犬病ウイルス(PRV)gDの受容体として機能するブタネクチン1産生細胞を入手し、gDの機能解析を試みた。ビアコアを用いてBHV1gDとブタネクチン1精製標品との結合を確認したが、その親和性は低いものであった。また、BHV1gDに対する中和モノクローナル抗体にこの結合を阻止する活性は認められなかった。現在、PRVgDを用た構造変化のモニタリングを実施すべく準備中である。
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