本研究においてこれまでに、C型慢性肝炎再発患者の血清からRNAを抽出しlong RT-PCR法にてHCV非構造領域のcDNA(遺伝子型1b)を増幅し、そのサブゲノムレプリコンライブラリーから非常に複製効率の良い新たなサブゲノムレプリコン、pSGT5、を樹立することができた。本研究において新たに樹立されたレプリコンはこれまでに樹立されたものに加え、レプリコンの多様性を広げ薬剤スクリーニングやHCVの複製研究における選択肢を広げる意義がある。 一方、同じ患者血清から構造領域の欠損したHCV cDNAをクローニングすることができた。 その欠損HCV cDNAをpSGT5の上流(ネオマイシン耐性遺伝子とEMCV-IRES部分)に挿入した欠損HCV RNAを作製し培養肝癌細胞に導入した結果、HCVタンパクの発現が認められ、欠損型HCVが複製可能であることを示した。本年度はHCV再発患者血清に加え、他のHCV患者からも欠損型HCVを検出することができた。その陽性率は約22%であった。欠損ゲノムが認められた4症例から38種類の欠損HCVクローンをクローニングし遺伝子的な解析を行ったところ、HCV構造領域に広範囲な欠損が認められたが、5'非翻訳領域とコアタンパク領域は全てのクローンで保存されていた。また、全てのクローンがin-farmeでその翻訳可能性が示された。さらに、欠損型HCVを産生する培養細胞系を樹立することに成功し、欠損HCVのインビトロでの感染、複製能を明らかにした。 現在、インターフェロン治療法の選択や効果判定には5'非翻訳領域のPCRなどが用いられるが、この領域が欠損型でも保存されているとすれば、欠損型HCVと全長HCVを区別して増幅することは不可能である。したがって、症例によっては測定された血清中HCV量が必ずしも全長HCV量を反映していない可能性がある。
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