我々はTh2関連転写因子であるc-Mafの成人T細胞白血病(ATL)での役割を解析中、c-Maf発現にHTLV-1のCD4およびCD8選択性のヒントがある可能性を見出した。すなわち、(1)c-MafをJurkat T細胞株で強制発現させると、HTLV-1の強力な転写活性化因子であるTaxによるHTLV-1 LTRの活性化が抑えられること、(2)c-Mafは、静止期および活性化CD4^+T細胞で強発現しているのに対し、CD8^+T細胞では、静止期のみしか発現しておらず、活性化状態ではほとんど発現しなくなること、である。これらのことはCD4^+T細胞で抗原刺激などによる活性化が起こっても、c-Mafの発現によりTaxのHTLV-1 LTR活性化に抑制がかかり、CTLの標的となるTax等のウイルス関連蛋白の産生を抑制することを意味している。それに対しCD8^+T細胞では、抗原刺激などによる活性化時にc-Mafが発現しないため、HTLV-1 LTRの活性化が抑制されず、Tax等のウイルス関連蛋白の発現誘導を招き、HTLV-1特異的CTLによって効率良く除去される可能性が示唆された。さらに我々は、ATL患者由来細胞やHTLV-1感染細胞株を用いた実験でもc-Mafが遺伝子レベルで発現していることを見出した。これらのことは、(1)HTLV-1がCCR4+のTh2(あるいは制御性T細胞Treg)に潜伏感染する可能性があること、(2)ATLがc-Mafを発現するTh2(あるいはTreg)に由来する可能性があること、を示唆するものである。現在は分子レベルでの作用機序を解析中である。
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