1、ヒト293細胞でのヒトパピローマウイルス(HPV)DNA複製系を用いて、角化細胞で発現している転写因子がHPV複製に及ぼす効果を調べ、ヒト転写因子hSkn-1aがHPV複製を増強することを見出した。ゲルシフト解析により、hSkn-1aがウイルス複製オリジンの二ヶ所に結合することが示された。またクロマチン免疫沈降法により、細胞内でこの部位へのhSkn-1aの結合を検出した。この結合部位にhSkn-1aが結合出来ない塩基置換を導入すると、その複製増強作用が消失した。hSkn-1aがオリジンへの結合を介して、分化に連動したHPV複製に関わることが示唆された。 2、HPV後期プロモーターP670に20塩基の置換を端から順次導入したリポータープラスミドを用いて、P670に二ヶ所の転写抑制配列があることを見出した。組換えCDP蛋白質を用いたゲルシフト解析によって、細胞の転写抑制蛋白質CDPがこれらの配列に結合することが分かった。未分化細胞における後期プロモーターの抑制にCDPが関わる可能性が示唆された。 3、HPV16型の環状ゲノムDNAをヒストンおよびヒストンシャペロン蛋白質NAP-2、クロマチン再構築因子ACFと共に混合し、ATP分解のエネルギーを用いて、生理的なヌクレオソーム間隔を持つHPVクロマチンを作成した。HPVクロマチン上でのヌクレオソームの位置をマイクロコッカスヌクレアーゼ分解法にて解析したところ、ヌクレオソームがP670プロモーター領域に正確に配置され、細胞内でのHPVクロマチンを再現していることが分かった。また、HPV16型の複製蛋白質E1とE2を組換え蛋白質として精製し、ヒト293細胞の抽出液中でE1/E2存在下にHPVゲノムDNAを複製させる無細胞実験系を構築し、この複製系にて再構成HPVクロマチンが複製されることが示された。
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