研究課題
基盤研究(C)
HIV-1には現在まで9種類のサブタイプと16種類の組換え型が存在するが、中でもサブタイプC感染者数の増加は爆発的で世界における新規HIV-1感染者の過半数を占めることから、このサブタイプが高い感染性を有する可能性が示唆されている。HIV-1の感染性に関わるウイルス側因子Vifは、その標的となる細胞性因子APOBEC3G(hA3G)の発見により近年脚光を浴びている。この宿主蛋白は、逆転写中のウイルスゲノムにG→A変異を誘導して感染性を失活させる強力な自然免疫を担っている。そしてこの活性を相殺するHIV-1側因子がVif蛋白である。Vifはウイルス産生細胞においてこの宿主因子をプロテオソーム分解させウイルス粒子への取り込みを阻害することにより、ウイルスゲノムを守る働きをしている。ここで重要な点は、Vif蛋白にはサブタイプ間で遺伝子多様性があることである。この道伝子多様性が、抗hA3G活性及びその結果としての感染性増強能において、サブタイプ間で違いを与える可能性が考えられる。この仮説をもとに我々は、サブタイプ別にVif蛋白の抗hA3G活性について、機能レベルでの比較検討を行った。まず異なるサブタイプの臨床分離株由来HIV-1 Vif遺伝子をPCR増幅後に哺乳類発現プラスミドDNAへ挿入してVif発現ベクターを作製した。またVif蛋白の発現を確認する為に、サブタイプ間で保存されたアミノ酸領域を選びその合成ペプチド免疫による抗Vifウサギ血清を作製し、更にアフィニティ精製を行った。その抗体を用いてVif発現ベクターのトランスフェクションによるVif蛋白発現を調べたところ、サブタイプAE以外、用いた全てのサブタイプ由来Vif蛋白(A、B、C、及びAG)に反応したことから、作製したサブタイプ別Vif発現ベクター及び抗Vif抗体は共に機能していることが確認できた。次にそれらを用いてウイルスの感染性増強能を調べた。その結果、hA3G存在下ではサブタイプCのVif発現による感染性増強能が特に顕著であり、サブタイプAやサブタイプBのVifに比べて高いレベルを示した。このサブタイプC由来Vif蛋白の高い抗hA3G活性が、VifのhA3Gプロテオソーム分解能及び、その結果としてのG→A変異抑制レベルと完全に相関することを、今回明らかにすることができた。
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