研究課題
基盤研究(C)
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症は持続感染化して慢性肝炎から肝硬変、肝臓癌に至る疾患を引き起こす。HCVはプラス鎖RNAをゲノムとするウイルスであり、ウイルスゲノムの変異が多い。ウイルスゲノムの変異がウイルスの持続感染化に関与すると考えられているがその詳細は不明である。HCVの研究はウイルス培養系が存在せず、感染性ウイルスを用いた研究ができなかった。我々が分離したJFH-1株は培養細胞で感染および増殖複製が世界で初めて可能であることを報告した(Nature Medivine 2005)。本研究では、感染性C型肝炎ウイルスがどのような機構で培養細胞および生体にadaptationするかを解析し、HCVのadaptationに重要なウイルス側因子を同定し、その機構を明らかにすることを目的とした。培養細胞でのウイルス適合:合成HCVRNAをHuh7細胞へトランスフェクションすることにより得られた感染性HCVをナイーブなHuh7細胞へ繰り返し感染させた。ウイルス感染によりプラークを形成する場合がある。プラークを指標として感染ウイルスを回収して、新たな細胞へと再感染させた。その結果プラーク形成能が高くなっていることが明らかとなった。このウイルスゲノムには9個の変異があり、そのうち5個のアミノ酸変異を伴う変異がNS5Bにクラスターした。これらの変異はプラーク形成能およびウイルスゲノム複製に関与していると考えられた。チンパンジーでのウイルス適合:培養細胞で作製した感染性HVCとJFH-1の患者血清を別個のチンパンジーに接種した。両チンパンジー共に一過性の感染が成立したが、感染後のチンパンジー血清中に検出できたウイルスゲノムを解析するとNS2にアミノ酸変位を伴う共通の変異を見いだした。この変異はウイルス粒子形成効率に関与していると考えられた。
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