メモリーTh2細胞は、アレルギー疾患の病態に深く関わっていることが予想されているが、分化機構と病態形成における役割についての研究は、現在までほとんど行なわれていない。そこでメモリーTh2細胞の形質維持に関与している核内因子の同定とメモリーTh2細胞の生存維持を制御する核内因子の同定を目的に研究を行った。その結果、下記の研究成果を得ることが出来た。 (1)、メモリーTh2細胞において、ヒストンH3の4番目のリジン残基(H3-K4)のメチル基転移酵素複合体であるMLLの発現を人為的に低下させることで、メモリーTh2細胞からのTh2サイトカインの産生やGATA3発現の抑制することが可能であることが示された。さらに、アレルギー性気道炎症モデルでの検討からMLLの発現制御により、慢性炎症の病態をコントロールできる可能性が示唆された。 (2)、メモリーTh2細胞の生存維持にポリコーム群遺伝子の一つであるBmilが重要であることを見出した。続いて、Th2細胞における新規Bmil標的分子を探索し、アポトーシス誘導因子の一つNoxaがその標的であることを明らかにした。Bmilは、Noxa遺伝子のヒストン修飾やCpGメチル化をコントロールすることでNoxaの発現調節を行い、Noxa依存性の細胞死の制御を行っていると考えられた。また、Bmilを欠損させることでアレルギー性気道炎症モデルの病態を改善できることも示された。 (3)、転写因子Gfilが、Th2細胞機能の安定的な発現に重要であることが示された。Gfilは、GATA3の蛋白発現を安定化することで、Th2形質の獲得に寄与すると考えられた。
|