自然免疫の主役である樹状細胞に発現される膜貫通C型レクチンは免疫細胞レベルで、細胞の活性化あるいは抑制化を起こすシグナルの入口となる。我々は、これらのレクチンの内、DC-SIGNを取り上げ、そのがん細胞やT細胞上の糖鎖リガンドとの相互作用に着目し、糖鎖シグナルを介する腫瘍免疫およびT細胞免疫応答における獲得免疫系の制御に重要な役割の解析を進め、以下のことを明らかにした。 1.DC-SIGNが結腸がん関連血液型糖鎖抗原Le^a/Le^bとの結合を介して、がん細胞と正常細胞を識別し、腫瘍免疫の制御に関わることを初めて示した。末梢血単球由来の樹状細胞と結腸株細胞の共培養実験から、DC-SIGNを介する結腸がん細胞への結合により、樹状細胞からのIL-6、IL-10の分泌が促進され、樹状細胞の成熟およびナイーブT細胞のTh1細胞への分化が抑制されることが明らかとなった。これらの結果は、DC-SIGNが腫瘍免疫に対して抑制的に機能することを意味し、がん細胞が免疫監視機構から逃避するメカニズムとして働くことを示すものである。 2.我々は、CD26が樹状細胞C型レクチンDC-SIGNのT細胞上の新たな糖鎖リガンドであることを見出した。また、CD26を同定した際に、CD26分子以外に共沈してくる190kDaと43kDaのタンパク質があった。これらのタンパク質はその後、アミノ酸配列より、CD45とADAと同定された。CD26は、それ自体が細胞外にDDPIVと呼ばれるペプチド分解酵素活性を有する特異なT細胞共刺激分子である。その細胞外領域がアデノシンデアミナーゼ(ADA)、チロシン脱リン酸酵素CD45などに直接に会合していることが示されている。このことは、糖鎖認識を介したDC-SIGNとCD26・ADA・CD45複合体との結合による免疫シナプスの形成によりCD3のシグナルに関与してT細胞の補助シグナルとして機能している可能性を示唆している。
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