研究概要 |
本研究では、これまでの研究成果をもとにして、Notchリガンドを用いてTリンパ球の機能を制御するシステムの確立を目的として、以下の3つの研究課題を進めている。 1.Notchリガンド(Delta1, Delta2, Delta4, Jagged1, Jagged2)のTリンパ球の免疫応答への影響に関する検討:Notchリガンド遺伝子をレンチウイルスベクターに組み込み、ウイルス上清を調製した。TCR-トランスジェニックマウス由来Tリンパ球をウイルス感染した骨髄由来の樹状細胞(DC)で抗原刺激して、増殖応答やサイトカイン産生を調べた。その結果、DCにDelta1遺伝子を過剰発現すると、CD4Tリンパ球およびCD8Tリンパ球の両方で、IFN-γの発現が著明に増強されることを確認した。また、CD8Tリンパ球では細胞障害活性に必須であるグランザイムBやパーフォリンの発現も増強された。その他のNotchリガンドに関しては、Delta4で同様の結果を得えたものの、Tリンパ球応答に明確な影響は認められなかった。また、in vitroの実験系でNotchの糖鎖転移酵素の1つであるlunatic fringeがTリンパ球の分化調節に関与し、Nothchシグナル制御の標的分子の1つであることを明らかにした。 2.変異型Notchリガンドを用いたTリンパ球の免疫応答の修飾あるいは制御の試み:Delta1の細胞内短縮型変異体遺伝子を3種類作製し、レンチウイルスベクターに組み込み、ウイルス上清を調製した。上記と同様なin vitroの実験系でTリンパ球応答を調べた結果、いずれの変異型Notch1を発現するDCも、正常なDCと比べて、Tリンパ球からのサイトカイン産生や増殖に優位な変化を示さなかった。現在、有用な変異に関してより詳細な検討を行っている。 3.変異型Notchリガンド遺伝子のトランスジェニックマウスの作製とTリンパ球の免疫応答の解析:上述のようにTリンパ球応答を修飾できる変異型Delta1遺伝子を得ることに成功していないため、トランスジェニックマウスの作製はまだ行っていない。目的の変異体遺伝子ができ次第、取りかかる予定である。
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