研究概要 |
フィコリンは、フィブリノーゲン様ドメインを機能ドメインとするレクチンであり、細菌などの表面糖鎖を認識して生体防御に働くと考えられている。本研究は、フィコリン欠損マウスの表現型を解析して、フィコリンの生理学的役割を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の点を明らかにした。 (1)フィコリンB欠損マウスは、レクチン経路は正常であり、組織にもはっきりした異常は見られなかった。また、末梢血の血液像や血球数にも異常はみられなかった。現在、骨髄に存在する天然フィコリンBの解析と昆虫細胞で作製したリコンビナントフィコリンBの解析を進めている。 (2)フィコリンA/Bダブル欠損マウスは、組織に異常は見られなかったが、フィコリンA欠損マウスと同様に、フィコリンAを介するレクチン経路が欠損しており、C4活性化で測定した補体活性化能が有意に低下していた。リコンビナントフィコリンAの添加により活性は回復した。フィコリンA/Bダブル欠損マウスでは、レクチン経路の活性低下、とくにC3bによるオプソニン化の低下に伴い、血中におけるS. aureusの増殖阻止能力が減弱していた。これらの結果は、これまでのフィコリンA欠損マウスの解析結果とともに、血液中でフィコリンAがレクチン経路を介して,感染防御に働いていることを示している。
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