研究概要 |
生体防御とくに感染症、癌に対する免疫を成立させる上で、樹状細胞がナイーブT細胞を活性化できる唯一の抗原提示細胞であり、樹状細胞の機能・成熟化が獲得免疫の機能制御に関わっていることは良く知られている。しかし成熟化分類において樹状細胞の表現型から見た成熟化だけでは、T細胞の免疫応答を必ずしも意味しない。そこで本研究の目的は、この不明確な部分を解明して樹状細胞の機能的成熟化の探索を目指すことである。[結果]特に樹状細胞由来のアミノ酸代謝酵素であるindoleamine2,3-dioxygenase(IDO)、及びアルギナーゼに着目し、既存の樹状細胞の成熟化の指標とT細胞免疫応答の関係と合わせて総合的に評価している。これまでの免疫応答能の解析の結果、Mixed lymphocyte reaction(MLR)刺激能とサイトカイン産生能、特にIL-12の産生能が相関していたが、当初着目していたIL-23産生能は相関がないことが判明した。また樹状細胞のIDO活性は、PGE2やIFN-γのなどのサイトカインによる特定の刺激と他の成熟シグナルであるCD40L、TNFα等の組み合わせにより異なることが判明した。一方で、負のシグナルである樹状細胞によるIL-10の産生は全く関与していないこともわかった。今後の展開としては、細胞代謝産物の評価と成熟化シグナルによる機能・表現型などの生物学的特徴、及び転写産物による核内シグナルなどと比較して成熟関連分子の相関図を作成する。その後、異なるサイトカイン刺激の組み合わせによる樹状細胞の変化をmicro arrayを用いて比較し、関連分子を同定する。また、同定された最も制御している分子に対しsiRNAを用いてブロックして免疫応答の機能的変化を検討していく予定である。
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