研究概要 |
【目的】按摩又は鍼灸の自営業者の実態を明らかにするとともに視覚障害業者と晴眼業者の経営特性を検討する。【方法】全国の按摩又は鍼灸施術所77,352ヵ所(2006年末の統計)の中から6,000ヵ所を無作為に抽出し郵送調査を行った(2007年2月実施、回収率23%)。【結果】業者全体の9割以上を個人業者が占め法人経営は1割に満たない。個人業者の属性を見ると8対2で男性が多く6割余りを50歳以上(平均年齢53歳)が占める。また業者の3割が視障業者で85%が重度の障害を有していた。施術所の規模を見ると、施術室面積は30m^2以下が4分の3、待合室面積は10m^2以下が7割、ベッド数2台以下が4分の3を占める一方、常勤の施術者数も「1人」の施術所が85%を占め小規模・零細業者が多い。一人当たりの施術料金は平均3,670円だったが全体の8割は3,500円未満で、業者間・地域間の格差が大きい。また、1月当たりの取扱患者数が50人未満が3分の1、100人未満を累積すると6割を占める。これを反映して年収300万円未満の低収入業者が約半数にのぼるが800万円以上の業者も15%に及ぶなど収入格差は大きい。患者数と年収を健康保険の取扱の有無で見ると、積極的取扱群(全体の4分の1)が非取扱群より患者数で2.9倍、年収で2.2倍高かった。【考察】個人業者の業態を視覚障害の有無で見てみると、男性の割合で4.8ポイント、平均年齢では5歳ほど視障業者が高く、施術所の規模(施術室と待合室の面積、ベッド数、常勤施術者数)では晴眼業者の施設が大きかった。また、健康保険の取扱状況が経営に影響を及ぼしていることが示唆された。取扱患者数で2倍、年収で2.4倍も晴眼業者が視障業者を上回った背景には、晴眼業者の健康保険の積極的取扱率が10ポイントも視障業者より高いことが一因として考えられる。【結語】視障業者は晴眼業者に比べ男性と高齢者の割合が高い。一方、個人業者の経営規模は総じて小さいが、とくに視障業者では小規模・零細化の傾向が強い。
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