本研究の目的は、従来より実施されているPBLの評価法と新しい評価法とを比較・検討することで、PBLで修得される問題解決能力を、信頼性と妥当性を持って評価できるPBL評価法を提示することである。 平成18年度 4年生を対象に9ユニットの講義とPBL後にMCQ、MEQ(変形論述試験)、概念マップによる評価を実施し、PBL中の評価表を利用したチュータの観察記録との相関をみた。観察記録と全ての試験とに相関はなかった。各ユニットの評価法ごとの比較では、概念マップはMCQとMEQそれぞれと低い相関のあることがわかった(平均相関係数:0.29、0.23)。概念マップは知識量に加えて知識を応用する問題解決能力も評価している可能性がある。 平成19年度 4ユニットのMEQについて、その試験の信頼性を検定するためにCronbachα(α値)を算出した。各MEQのα値は、0.619、0.712、0.589、0.602で、それぞれの問題数は8、8、10、13であった。信頼性を更にあげるためには問題数の増加が必要であり、各MEQで30題出題できればα値はそれぞれ0.859、0.903、0.811、0.777(平均0.837)となり、信頼性の向上が期待できる。各MEQは1症例からの出題であり、試験の妥当性は高くなかった。Key featuresを用いた試験(KF試験)を実施した2ユニットのα値を算出した。各α値は、0.520、0.538で、それぞれの症例数(問題数)は3(13)、5(20)であった。症例数を増やすことにより試験の妥当性は向上したが、信頼性は逆に減少した。問題数を増やすことでα値の増加が推測されたことから(30題:0.714、0.636)、試験の妥当性、信頼性を向上させるためには、症例数と共に問題数を更に増加させる必要がある。 PBLで修得される問題解決能力を信頼性と妥当性を持って評価するには、十分な症例数と問題数からなるMEQやKF試験が有用であり、概念マップも同様の評価法として利用できる可能性がある。
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