(1)英米圏のパブリックヘルス・エシックス(公衆衛生倫理学)に関する文献レビュー:医学一般、政治哲学、生命・医療倫理学、倫理学一般のデータベースを用いて、英米圏の公衆衛生倫理学に関する包括的な文献レビューを行い、これらの資料をもとに、基礎資料として総説を執筆した。 (2)日本の医療系大学への質問紙調査:日本の公衆衛生関係の講座における倫理教育の現状、および期待されるカリキュラムについて質問紙調査を実施した。その結果、回答のあった6割の講座は、公衆衛生の倫理に関するテーマを扱った科目があった。9割以上の回答者が、公衆衛生の倫理の教育の重要性を認識していた。これらの結果を分析し、学術論文として投稿し受理された。成果は2009年度医学教育誌に掲載予定である。 (3)日本における公衆衛生の歴史研究:歴史的研究手法を用いて、目本における公衆衛生の思想史歴史の概観を執筆した。 (4)カリキュラム作成:全国の公衆衛生学領域分野で実施可能なカリキュラム案を作成し、実際に、東京大学大学院医学系研究科、公共健康医学専攻で、講義を実施した。講義内容は、「会衆衛生と政治哲学」「資源配分と新型インフルエンザ」「研究倫理:HIVワクチン開発」「健康格差と正義」等で、2単位分に相当する。このモデルカリキュラムでは、ケース・スタディーを取り入れ、グループでのディスカッションを通じた問題解決能力を育てることを試みた。この内容は、著書として公刊する予定である。
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