1.ディジタル聴診器時間軸可変機能の心臓聴診教育への応用について 医学部第5年を対象に特徴的な5種の心音、心雑音について、ディジタル聴診器による時間軸延長の効果を検討した。結果、時間軸可変機能は心臓聴診能力の向上に有用であるが、その効果は連続して生じる複数の異なる要素の心音・心雑音の弁別と時間関係の把握において大きいと考えられた。 2.総合診療内科外来における心音異常・心雑音の意義について 胸部症状を主訴として総合診療内科を受診した患者について心臓聴診所見を検討した。結果、1)心音異常・心雑音が認められる例は約30%であった。2)過剰心音のうちではIV音を弁別できることが、今後の高血圧患者の増加を考えると重要となってくると考えられた。3)心雑音の中では収縮期雑音の頻度が高く、そのうちの約80%は機能性(無害性)雑音であった。4)心雑音を聴取する症例の年齢は高い傾向にあり、また収縮期雑音の頻度が高いことから、近年高齢者で増加傾向にある大動脈弁狭窄症の弁別が重要と考えられた。 3.シミュレータを用いた心臓聴診教育について 心音異常・心雑音を組み込んだシミュレータを用いて心臓聴診教育を行った。心音・心雑音の聴取のみであれば、テープ、CDを聞かせるという手法で教育目標は達成できるが、心音の聴取部位、聴診器の使い方、Thrillの触れ方などはモデル、あるいはシミュレータを用いることが極めて有効であり、その意義が確認された。一方、異常所見の把握については、まず講義による病態生理の理解と、テープやCDなどによる実際の異常所見の体験の後に、シミュレータによる実習に臨むという方法とるのがよいと考えられた。また、現実を忠実に再現する(ハイファイ)シミュレーションは重要であるが、時間軸延長のように生体現象を加工して理解しやすく表示するという方向も検討する価値があると考えられた。
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