研究概要 |
近年、わが国において急速に普及しているPET(Positron Emission Tomography)は全臓器を対象とし、新たながん検診として期待されている。しかし、PET検診の有効性評価は行なわれておらず、一部の施設の成績の報告され、受診者の過剰な期待観をあおっている可能性がある。PET検診は現状では限られた検診機関において、受診者の任意で受ける検診の形態をとっており、その費用は受診者本人が負担している。検診費用の設定は診療報酬を参考としている場合が多いが、その根拠は明確ではない。このため、PET検診は受診者が自らの価値観や様々な情報に基づき、受診するに値すかの否かの判断を行なっている。そこで、受診者にとってPET検診がどの程度の金銭的価値があるかについて、費用便益分析の1手法である自発支払い法(Wilingness to pay,WTP)を用いて測定した。 平成18年度は、国立がんセンターがん予防検診研究センターにおいて、PET検診に対するWTPについて、自由回答方式による調査を行い、120人の回答を得た。うち男性64人、女性56人であり、平均年齢は各々61.2±8.8歳、60.1±8.8歳であった。WTPは5千円から50万円まで分布し、最頻値は5万円であった。WTPは女性より男性が高い傾向が見られたが有意差はなかった。PET検査の選択、PET検査歴、検診のための休業による差はなかった。また、婚姻、世帯収入、喫煙、飲酒、slow growing cancerに関する知識によるWTPの差はなかった。年齢、検診センターに至るまでの交通費、EQ5Dによる効用値との相関もなかった。平成17年度行ったインターネット調査では、20-49歳の1万円から2万円であり、50歳以上では5万円から6万円であった。50歳以上に限定した場合、両者のWTPは5万円が最頻値とほぼ一致していた。
|