研究概要 |
アルドゲト還売酵素(AKR)ファミリーの一つであるAKR1B10はヒト非小細胞肺癌組織において大量に誘導されることが報告されている。そこで、basalでのAKR1B10の発現がほとんど認められない非小細胞肺癌細胞株H23に種々の刺激を与え、RT-PCRによって解析したところ、過酸化水素および親電子性物質のEthoxyquinによりAKR1B10のmRNA量の増加が認められた。次に転写調節機構を解析するためAKR1B10遺伝子の5'-上流領域を単離したところ、一部塩基配列の異なる2種類のalleleが存在することが明らかとなった。本位電子にはCT-rich領域が存在し、両allele間には本領域でのCCTTリピートのマイクロサテライトが存在した。そこで、本領域が転写調節に関わっているかを検証するため、AKR1B10が恒常的に発現している非小細胞肺癌細胞株A549をもちいてレポーターアッセイをおこなった。その結果、本マイクロサテライトは転写活性には関与しないことが明らかとなった。また、5'-上流領域を順次欠失させて検討した結果、-3.0kb〜-2.2kb領域においてbasalの転写調節に関わる配列が存在することが示された。一方、AKR1B10がEthoxyquinによって発現上昇することから,本物質が活性化すると考えられている転写因子Nrf_2の関与について検討した。上記のレポーターアッセイの系にNrf_2タンパク質の発現プラスミドを導入した結果、有意なプロモーター活性の上昇が認められた。このようにAKR1B10は発癌を誘導するような酸化的ストレスや、その制御に関与する転写因子Nrf2により転写調節されることが明らかとなった。
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