インターフェロンY(IFNy)のレセプターはR1とR2から構成される。IFNyは抗腫瘍効果を有するが、この抗腫瘍効果が発揮されるか否かは、細胞が発現しているR1とR2のバランスによる。理的条件下での多くの細胞や癌細胞は通常、R1は発現しているが、R2は発現していないかあるいは低レベルしか発現していない。もし癌細胞においてR2の発現を増加させることができれば、IFNyによる治療効果の増強が期待できる。平成18年度の研究においては肝細胞癌細胞株(HUH7、SNU449)を鉄キレート剤の存在下で培養することで、R2発現の増加を誘導し、IFNyの抗腫瘍効果を増強させうることを示した。平成19年度においてはこの効果を他臓器癌において検討するため、3種類の大腸癌細胞株(SW480、COLO、WiDr)を用いて検討した。鉄キレート剤(DFO)を添加することで3種類の大腸癌細胞株全てにおいてR2発現が増加した。DFO存在下で培養した3類の大腸癌細胞株にIFNyを作用させると、有意な増殖能の抑制が認められ、フローサイトメトリーではapoptosisに陥った細胞数が有意に増加していた。前年度の研究とあわせて、鉄キレートは肝細胞癌と大腸癌におけるR2発現を増加させ、IFNyの抗腫瘍効果を増強させる。この際のIFNyの抗腫瘍効果のメカニズムは癌細胞に対するapoptosis誘導によるものと考えられる。鉄キレートとIFNyを組み合わせた治療は肝細胞癌、大腸癌に対する新しい治療戦略となる可能性が示唆された。
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