研究概要 |
本研究では抗癌薬の代謝に関係する複数の薬物代謝酵素遺伝子の遺伝子多系をハプロタイプを含めて検討し、ヒトにおいて複数の遺伝子多型と抗癌薬代謝活性との関係を総体的に評価した。本年度は本研究を本学生命倫理委員会で審査・承認を受け、治療のため外科手術により肝臓組織の切除を受ける患者を対象として説明、患者本人より文書による同意を得た。肝組織の一部からgenomic DNAを抽出してCYP1A2,2C8,2C9,2C19,2D6,3A4,dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD),multidrug resistance protein 1(MDR-1)のマルチジェノタイピングをそれぞれに特異的なプライマーを作成し、RT-PCRを行った後、制限酵素を用いたRFLPおよびダイレクトシークエンスにより行った。CYPの遺伝子多型ではCYP1A2^*1F、CYP2C19^*2、^*3、CYP2D6^*4、^*5、^*6、^*10、CYP3A4^*4、^*16がそれぞれ同定された。MDR1では-41A/G、-129T/C、1236T/C、2677G/A,T、3435C/T、4036A/Gがそれぞれ同定された。これらの結果、将来これらの患者が薬物治療を受ける際、投与量や副作用に注意を払う必要性が示された。また、DPDでは^*5が23%、^*6が1.5%のアリル頻度で見つかり、これらの患者では抗癌薬である5-fluorouracilの代謝能が低い可能性が考えられ、今後抗癌薬治療を行う際に注意する必要性が示唆された。
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