研究概要 |
抗癌薬の吸収や代謝に関係する代謝酵素やトランスポーターの遺伝子多型についてハプロタイプも含めて検討し、将来の抗癌薬治療におけるテーラーメード医療の可能性について調べた。治療のため手術により肝臓の切除を受ける患者に説明、患者本人より文書による同意を得た。摘出された肝組織のうち、病理診断に用いない部分の一部からgenomic DNAを抽出してCYP1A2,2C8,2C9,2C19,2D6,3A4,multidrug resistance protein 1(MDR-1)のマルチジェノタイピングを行った。CYPの遺伝子多型ではCYP1A2*1F、CYP2C19*2、*3、CYP2D6*4、*5、*6、*10、CYP3A4*4、*16がそれぞれ同定された。MDR1では-41A/G、-129T/C、1236T/C、2677G/A,T、3435C/T、4036A/Gがそれぞれ同定された。変異のアリル頻度はそれぞれCYP1A2*1F(69.4%)CYP2C19*2,*3(41.7%),CYP2D6*4,*5,*6,*10(42.6%),CYP3A4*4,*16(2.9%),MDR1では-41A/G(16.7%)、-129T/C(9.4%)、1236T/C(24.2%)、2677G/A,T(64.6%)、3435C/T(40.9%)、4036A/G(27.3%)であった。CYP1A2、CYP2C19、CYP2D6、MDR1の12677G/A,Tと3435C/Tでは変異のアリル頻度も高く、これらの薬物代謝酵素で代謝される薬物、MDR1で輸送される薬物を治療に使用する際、注意が必要であることが明らかになった。さらにMDR1は各種抗癌薬の耐性にも関わることから、これらの患者では今回の結果が抗癌薬治療における治療戦略上、重要であることが示唆された。
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