研究概要 |
1.容器への非特異的吸着 シスタチンCは、疎水性塩基性蛋白で、βシート構造がアンチパラレルに存在しconformationalな変化をきたす。尿中濃度の測定において容器に非特異的吸着を起こしunderestimationの原因となりうる。そこで独自に酵素抗体法を開発して、高度疎水性、軽度疎水性、高度親水性の材料からなるプラスチックチューブを用いて、吸着濃度を定量的に測定した。この結果、疎水性容器に吸着が見られ、疎水性にはほとんど見られないこと、尿中蛋白量が多い尿ほど吸着量が少ないことなどを示した。疎水性容器においても、尿中濃度の僅か5-6%程度しか吸着が無く、物性を考慮すると、シスタチンCについては日常の検査測定で、容器に非特異的吸着による影響(は無視できることが判明した(論文投稿中)。 2.尿中シスタチンCの安定性 尿の酸性化により、尿中シスタチンC濃度は低下することが示されている。そこで、患者尿をpH4.0,pH8.0に調整し、ここに遺伝子産物を添加し、室温、37℃で1日放置後ELISAで測定した。色素法(ローリー法)では変化がないが、免疫測定法では低下が見られた。アルブミン同様、抗原決定基の修飾が影響しているように思われる。 3.尿沈渣成分細胞成分による検索 円柱における変性蛋白の存在の有無について免疫組織化学的に検討を行った。この結果、アルブミン、シスタチンCなどに局在を証明した。とりわけアミロイドβ蛋白については顆粒円柱が陽性となり、ポリスチレンウエルに固相化したコントロール抗原と反応したのでその条件で尿サンプルを測定したが、特異反応は得られなかった。免疫組織化学の所見が非特異であるのか、検出法による差異なのか検討が必要である。 4.プロテイン1の動態分析 尿中プロテイン1は安定で変性が少なく、肺の病態変化を尿の動態分析で捉えることが出来た(Ann Clin Biochem 44:58-67,2007) その他 この研究過程で得られた成果から基準範囲に関する研究へと進展させた(Clin Chem Lab Med45:1232,2007)。
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