研究概要 |
尿中に多くの蛋白、ペプチドが存在する。ここには種々の生理、病的状態で種々のプロテアーゼ、アンプロテアーゼが出現し、蛋白分解、ペプチドによる測定分析に影響を及ぼす。精度保証システムに従い、蛋白分解とその影響因子の解明を進める特異性、感度に優れる尿中マーカーの探索の基礎を研究とした。 1. 尿中蛋白分解の機序:β2-ミクログロブリン、IgGを対象にWestern blotsによる分解酵素の切断部位を検索し、cathepsin Dのみならず、pepsin, gastricinなど複数の酸性分解酵素が関与することを示した。 2. ヒトα1-マイクログロブリン(α1-m)尿中安定性、不均一性:尿中α1-m測定値は測定法間でバラツク。そこで、仮の標準品を配布し検討した結果、系統誤差によることを明らかにし、補正係数を定め解決した。安定した結果を得るには検量物質は凍結乾燥処理する必要がある。 3. 尿中シスタチンC:酸性尿中で不安定で変性しやすく、一次構造上は上記分解酵素で6箇所切断部位がある。塩基性蛋白で濃度が低いため、採尿容器への非特異的吸着は軽微で測定値への影響は少ない。血清基準値を設定し、今後の尿基準値設定の方法論を確立した。 4. Immunounreactive albumin:抗体結合affinity chromatographyにより、尿中には特異抗体と反応しないアルブミンが存在することを確認した。疾患特異性はなく、尿細管障害で高頻度に出現することを見出した。 5. 尿沈渣中に存在する蛋白成分:細胞成分に着目して酵素免疫組織染色により種々の蛋白成分の局在を証明した。この中であらたにアミロイドβについても、陽性所見を認めた。今後、免疫化学的な確認が必要となる。 6. 尿プロテイン1(P1)の測定意義:塵肺症で尿中濃度が低下し、肺機能低下の評価が可能であることが示された。尿中では、安定で切断部位は1箇所しかない。
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