研究概要 |
近年の臨床研究から、糖尿病性神経障害に特徴的な小径感覚神経障害が、糖尿病の前段階である耐糖能障害(IGT)やメタボリックシンドロームにおいても高頻度に認められることが示されている。しかしながら、IGTから2型糖尿病へと耐糖能の悪化に伴って、小径感覚神経機能にいかなる変化が生じ、この変化がメタボリックシンドロームに随伴するどのような代謝異常と関連性を示しているのかはよく解っていない。我々は、インスリン抵抗性肥満Zuckerラットおよびインスリン抵抗性2型糖尿病ZDFラットを用いて、小径感覚神経機能の指標である温痛覚反応の経時変化を解析し、認められた変化とこれらのモデルのインスリン代謝異常との関連性を検索した。結果、インスリン抵抗性および2型糖尿病ラットモデルでは、持続性の高血糖を認める以前に温痛覚過敏が出現おり,これらのラットにおける温痛覚過敏は、代償性高インスリン血症を伴うインスリン抵抗性の初期徴候の一つである可能性が示唆された。また、これらのラットでは、温痛覚鈍麻が、この高インスリン血症の消失時期と一致して認められた。以上の結果は、インスリン抵抗性ラットモデルに認められる痛覚異常が、血糖値とは独立してインスリン代謝異常と関連性を示す可能性を示唆している。
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