研究課題
基盤研究(C)
ヒト冠動脈平滑筋細胞の遊走反応は動脈硬化症、血管形成術後再狭窄時の内膜肥厚に伴う特徴的な細胞応答である。LDLは細胞遊走促進、HDLは遊走抑制を起こし、従来、指摘されているリボ蛋白の病態における作用と一致する。我々は既に、LPAはLDLと同様に遊走促進、S1PはHDLと同様に遊走抑制を起こすことを見出している。本研究ではLPA, S1Pの相反する作用の結果が反映されるこの遊走反応を調べることでリボ蛋白の血管病リスクに対するバロメーターとする。従って、各個体からLDLを調製し、LDLによる平滑筋細胞の遊走反応とLPA、S1P濃度比の関係を測定することをできるだけ多数の個体で調べ、脂質分子バランスが平滑筋細胞の遊走反応(強力な細胞遊走活性を有するPDGF有無)と相関することを証明することが目的である。準備状況で説明したように、そのための実験上の課題は全てクリアしている。しかし、この方法は理論的には問題がないが、LDLを調製直後に、これら一連の応答実験を行う必要があり、各個人から採血、リボ蛋白分離、透析(24h)、アッセイ(24h)を一定のスピードでおこなう必要性がある。更に、細胞遊走のための細胞をたえず準備しておく必要がある。従って、実験対象者が一人しかいない場合、この一連の実験のために膨大な労力をとる必要がある。(1)調製直後のLDLから保存可能なLPA、S1P画分を調製した後にこれらの一連の実験を行うことでも同様な結果がでることを確認している。(2)患者と健常者からの検体の採血、リポ蛋白分離、透析後、LPA、S1P画分を調製した後、細胞の実験まで保存が可能であることの確認をしている。(3)血管平滑筋細胞での遊走活性測定データの集積と解析を行っている。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
J Biol Chem 281(49)
ページ: 37457-67