研究概要 |
平成18年度は、研究計画の概要に沿って、原因不明とされている炎症性疾患、肉芽腫形成性疾患について、NODs-ASCシグナル伝達系の異常が関与している、という仮説を検証した。その間、NODsに関して受理されていた論文が出版された(発表論文1,2)。本年度は、比較的切除標本の得やすい『クローン病』の患者様の生検材料、手術材料を使ったサイトカインアッセイを行った。切除された『クローン病』発症消化管粘膜、あるいは大腸癌の非癌部の正常粘膜を、短時間各種濃度の細菌構成成分と培養し、IL-1β,IL-6,IL-8,TNFα,IFNγを経時的に測定した。また、Western blot法によってASCの定量を経時的に行った。その結果、グラム陰性細菌の莢膜のリポ多糖(LPS)に対して、正常粘膜は容量依存的にIL-8,TNFαを産生し、10ngLPS/ml程度で極大を迎え、10ngLPS/ml以上の濃度では逆にサイトカインの産生が抑えられた。これは、病原細菌に対する過剰な反応が、正常粘膜では制御され、自身の組織破壊を防ぐように働くということで説明できる。一方、『クローン病』発症消化管粘膜では、無刺激でも相当量のIL-8,TNFαの産生が見られ、10ngLPS/mlを超える濃度でも抑制が見られなかった。予想外なことに消化管粘膜からのIL-1β,IFNγの産生は検出感度以下であった。これらの知見をまとめ、Biochemistry Biophysiology Research Communications誌、346巻、968-973頁に発表した(発表論文1)。その間、原因不明の肉芽腫形成性疾患患者の組織サンプルから抽出したDNAの解析をおこなったが有意な変異はいままでのところ得られていない。また、NOD刺激活性を持つ化合物は、変異NODの機能を解析するために必要であるので、その探索に関する研究にも参加し、ミシガン大学のグループと共同でNod1刺激因子に関する知見をJournal of Biological Chemistry誌(印刷中)に投稿し、受理されている(発表論文4)。また、本研究にとって必要なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を作成しているところであるが、市販の良好な抗体を使った解析も先行して行っているところである。NODの最下流で働く活性化型カスパーゼ3の抗体を使った組織染色では、良好な結果が得られ、Clinical Cancer Research誌(印刷中)に投稿し、受理されている(発表論文6)。
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