気管支喘息は環境要因と遺伝要因が関与する多因子疾患である。気管支喘息の診断は多くの場合症状からなされ、明確な診断基準は現在のところまだない。喘息の診断は将来いくつかの項目を総合的に判断する診断基準が確立されると考えられる。その中の重要な一項目として遺伝子診断が挙げられる。我々は多因子疾患の解析に適したリコンビナント近交系(recombinant inbred: RI)という特殊なマウスを用いた動物モデルで、環境要因を同一にして遺伝的解析を行ってきた。本研究の目的は喘息の疾患感受性遺伝子を同定し、最終的にヒトで気管支喘息の遺伝子診断を可能にすることである。確認した気道過敏性(AHR)、好酸球の気道への集簇(Eo)および即時型喘息反応(抗原特異的IgE値:Ag-IgE)に関与する遺伝子座(AHRおよびEoについては各1箇所、2箇所の有効レベルを超える遺伝子座を、またAg-IgEについては示唆レベルの4箇所の遺伝子座)について疾患候補遺伝子を同定するために、全26系統ならびに両親系統さらにF1マウスのうちAHR、EoまたAg-IgEの各々の表現型に対して弱反応性、中間反応性および強反応性のSMXA系を選び、マウス肺組織よりmRNAを抽出しマイクロアレイ法により網羅的な遺伝子の発現解析を行った。各々の表現型に対して弱反応性、中間反応性および強反応性の順に発現量の多くなる遺伝子についてQTL解析の結果得られた遺伝子座に位置するものを検討したが、正確に同一座に位置するものは得られなかった。遺伝子位置がQTL解析の結果得られた遺伝子座の近傍に位置するものについて検討を進めるとともに、さらなる正確な遺伝子発現プロファイルを検討中である。QTL解析の結果得られた遺伝子座とその遺伝子座についてコンソミックマウスを用いて確認した段階までを現在投稿準備中である。
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