研究概要 |
本研究は,タンパク質と低分子有機化合物(代謝産物や薬物)との相互作用を微量の試料で精密測定する方法の開発を目指している。本方法(微量FGC)が実現すると,100マイクロリットル程度の血清で各個人の血清タンパク質(アルブミンなど)の機能を定量化でき,糖尿病や高脂血症などに対する新しい診断情報の入手が可能になる。 平成19年度は,以下の成果を得た。 1.50μL-スケールでの超微量FGCを実現。内径0.5mm,長さ10cmのキャピラリーカラムに高性能ゲルろ過樹脂を充填,高圧ナノシリンジポンプによる無脈流送液,流路容積の微量化などにより,50μLの試料で良好なフロンタルパターンが得られるようになった。 2.微量FGC理論の確立。微量FGCシステムの実態に基づくモデル化を行い,厳密な計算機シミュレーションを実施して,FGCが微量スケールでも理論的に保証されることを示した。理論的予測パターンと実測パターンはよく一致し,微量FGCの信頼性を証明できた。 3.ヒト血清アルブミンと結合部位マーカーリガンドとの結合曲線の精密測定。X線結晶構造から主結合部位が明らかになっているリガンド(ワーファリンやトリヨード安息香酸など)に対する結合曲線を微量FGCで広いリガンド濃度範囲で測定し,溶液中での結合パラメーターをはじめて系統的に測定した。現在,ヒト血清アルブミンの結合データベースの構築を進めている(従来のデータは測定条件がまちまちな上、結合曲線の一部しか測定していないので,利用価値が低い)。 4.個体別ラット血清アルブミンの精密結合機能測定。100マイクロリットルの個体別ラット血清から2ステップでアルブミンを精製し,そのS-ワーファリン結合曲線を測定することに成功した。これにより,微量FGCの臨床検査への応用の道が開けた。
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