血清アミロイドA蛋白(SAA)の代謝機構の解明のため、血中で結合しているリボ蛋白HDLとの結合親和性を検討した。方法は、分子間相互作用を解析する表面プラズモン共鳴を利用したビアコアを使用した。本年度は各種SAA遺伝子組換え体の準備、それをビアコアで使われるセンサーチップに固定化する条件、HDLをアナライトとしてアプライする条件、実際の親和解析法、以上を検討した。rSAAは基本的には不港性の蛋白であるため、精製後の凍結乾燥の際にアルカリ溶液で透析するという工夫が必要であった。固定化の際に中性〜酸性の条件で行うとSMが凝集体として固定化されることが判明し、一旦pH10の緩衝液で溶解後、pH8.5の緩衝液に置換したものを固定化して、モノマーに近い状態でのSAAが固定化された考えた。HDLをアナライトとしてアプライする際、HDLの自己凝集が起こらないよう界面活性剤の添加を要した。本条件ではSMとHDL特異結合が確認されたが、親和性は低く、ビアコアのもつ結合解離の同時解析パターンには適合せず、最大結合量を利用する親和解析の手法をとらざるをえなかった。この条件でHDLへの親和性はSAA1.5>SAA1.1=SAA1.3となり、in vivoのクリアランス検討でクリアランスが遅いとされたSAA1.5がHDLと親和性が高いという矛盾しない成績となった。一方、固定化するSAAの状態、つまりモノマーに近いか凝集体であるかを判断するため、各種モノクロナル抗体との反応性の差を利用できるか検討した。その結果、酸性で凝集したSMに優先的に反応するクローンの存在がわかった。このクローンはSAA凝集をモニターするツールとして期待される。
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